なぎさにふたり

マッチングアプリ文学

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

光と風に怯える彼

その日のアポは終業後。虎ノ門と新橋のあいだの、地下にある和食のお店で集合することになった。 めずらしく歳下の人、まあひとつ違いだから大した歳の差でもない。ただ名前が自分の弟と少し似ていることにやや違和を感じていた。弟とマッチしたのでは?とい…

話の通じない彼

極論、片想いも暴力だし、ボディタッチも暴力である。 唯一暴力の定義を外れるために必要なのが、ふたりのあいだの合意である。 心も身体も、一方的に欲されるのはそれだけで有害だ。欲した以上は見返りを求め、焦がれた以上は満たされたいと願う。相手にい…

あまりにも私服がダサい彼

もう何年まえになるだろうか。当然コロナ前ではあるのだが、あまりにも私服がダサい人とマッチングアプリで会ったことがある。 わたしはダサい人が嫌いだ。じゃあダサいの定義って何なの、月にいくら金使ってたらダサくないの、と言われそうだが、わたしの基…

好みじゃない、って差別なの?

ある人にとっては、わたしは酷くて醜い人間だった。顔貌はそれなりだが、性根でそういう自覚があった。また自覚があるだけマシだと思っている節もあった。「好みじゃない」。恋愛というフィールドでのみ使えるワイルドカード。人はこのカードを使うことで、…